脇役本

増補Web版

宮口精二

巨匠錦を飾る 左卜全

内田吐夢監督『大菩薩峠』(東映京都、1957年7月13日公開)。左卜全の道庵 先月、東京都立川市で開かれた「俳優 三谷昇 役者は道化 石に木に、描き続けたピエロへの想い」(アーティスティックスタジオ LaLaLa 、2023年5月3~14日)の話は、前回のブログ「道…

道化の顔 三谷昇

『ドン・キホーテより 諸国を遍歴する二人の騎士の物語』パンフレット(パルコ、1987年10月) 昨年末から先月にかけて、映画、テレビ、舞台で活躍したベテラン俳優の訃報が相次いだ。2022(令和4)年12月26日に絵沢萠子が87歳で、年明けの2023(令和5)年1月…

アトリエでふたり 中村伸郎

中村伸郎『永くもがなの酒びたり』(早川書房、1991年8月) 『ユリイカ』2020(令和2)年10月臨時増刊号総特集「別役実の世界 1937-2020」(青土社、2020年9月)が出た。今年3月3日に死去した劇作家、別役実の追悼を兼ねるとあって、錚々たる演劇界の重鎮、…

夏の影。昼のラヂオ 宮口精二

岡本喜八監督『日本のいちばん長い日』で東郷茂徳を演じた宮口精二(『日本のいちばん長い日』パンフレット、東宝事業・開発部出版、1967年8月) 先月出した『俳優と戦争と活字と』(ちくま文庫、2020年7月)に、徳川夢声の『連鎖反應 ヒロシマ・ユモレスク…

恩ちゃんの涙 恩田清二郎

恩田清二郎(『俳優館』第17号、1975年3月) 隔週更新のつもりで始めた本ブログの更新が、昨秋から滞りがちに。前回の「老いの艶 伊志井寛」から、2か月ぶりにアップした。 更新が滞ったのは、本を書いていたから。「戦後75年に合わせて、俳優と戦争をテー…

詩と、稽古場と、 北村英三

ここのところ“脇役盤”に手を出している。好きなバイプレーヤーが吹きこんだレコード、CDの類いである。それなりに蒐めたら、本や雑誌とは違った世界が見えてくる。そこで番外篇として、関西で活躍したバイプレーヤーのCDを紹介したい。『北村英三の世界 詩人…

マーちゃんの酒 清水将夫

今年の春から、このブログをはじめた。そろそろ年の瀬、ラストは誰にしよう、と考えて、清水将夫(しみず・まさお/1908~1975)の顔が浮んだ。 明治41(1908)年、東京生まれ。新劇の世界から映画へ移り、戦前は二枚目として、松竹蒲田、新興キネマの現代劇…

復活の朝 千秋実

女優の斉藤とも子。社会福祉士で、平和をテーマにした朗読や、発展途上国で暮らす小児がんの子どもたちの支援にも取り組む。『ゆうひが丘の総理大臣』(日本テレビ、1978年10月~79年10月)で魅せた凛とした佇まいは、いまも変わらない。 小学5年生のとき、…

借金催促の名人芸 山茶花究

「映画文献資料専門 稲垣書店」(東京都荒川区)のご主人、中山信行(信如)さんは、エッセイストでもある。著書『古本屋おやじ 観た、読んだ、書いた』(ちくま文庫、2002年)に、こんな文章がある。《まったく古本商売、〈売れずがっかり売れてがっかり〉…