脇役本

増補Web版

日本映画名優列伝 バイプレイヤーズ

 前回の中村伸郎から半年以上、更新が滞ってしまった。別案件の聞き取り取材で手一杯となり、当ブログは手つかずのまま。中村竹弥のソノシートつき雑誌、徳大寺伸や井上孝雄のファン雑誌など、紹介したいものはいろいろあるんだけど。
 そうしたなか、鎌倉市川喜多映画記念館(鎌倉市雪ノ下)から声をかけていただき、本やポスターを展示(出品)協力した。3月19日(金)から6月20日(日)まで開かれる企画展「日本映画名優(バイプレイヤーズ)列伝」である。
https://kamakura-kawakita.org/exhibition/202103_byplayers/

一口に《脇役》といっても、巨匠たちから絶大な信頼を置かれ、人生の酸いも甘いも味わい尽くした演技で主演だってお手のもの、堂々たる貫禄で主役の向こうを張り、演劇人として舞台のスポットライトも浴びる…そんな縦横無尽の活躍を見せる彼らには、まさに《名優》の名がふさわしいと言えるでしょう。
本展では 1950-70年代を中心に、日本映画の黄金時代を築いた「名優(=バイプレイヤー)」たちの仕事ぶりを、映画や書物を通してご紹介します。日本映画の豊かさ、その層の厚みを改めてご堪能ください。
(企画展「日本映画名優列伝」webサイト)

 浪花千栄子がモデルの連続テレビ小説『おちょやん』(NHK総合)が佳境を迎え、映画『バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら』(映画「バイプレイヤーズ」製作委員会)の公開を控えるなかでのスタートとなる。宣伝ビジュアルには、吉川満子、飯田蝶子、伴淳三郎、沢村貞子、草笛光子、小林桂樹、杉村春子、笠智衆、殿山泰司、望月優子、加東大介、浪花千栄子の顔がならぶ。
 会場には、「脇役本コーナー」が設けられるそう。埃っぽい部屋に積まれた古本を飾ってもらえるとは、うれしいかぎり。どんなふうに展示されるのだろう。
(感染症の収束次第だけれど)6月19日(土)午後には、映画上映+トークイベントを企画していただいた。
https://kamakura-kawakita.org/kevents/202106191330/

 本展の担当学芸員・阿部さんから、「オススメはなんですか?」と訊かれ、迷わず『にっぽんのお婆ぁちゃん』(M・I・Iプロ=松竹、1962年1月)を挙げた。男女とわず名だたるベテラン俳優がそろい踏みした、今井正監督の風刺喜劇である。



『にっぽんのお婆ぁちゃん』(M・I・Iプロ=松竹、1962年1月)スピードポスターとプレスシート

 そのリクエストに応えていただき、トークと合わせて上映できることになった。親分じいさん杉山(山本礼三郎)、ノイローゼじいさん加藤(小笠原章二郎)に、鎌倉で再会できる!


『にっぽんのお婆ぁちゃん』プレスシート(部分拡大)

 トークのお相手は、フリーペーパー『名画座かんぺ』発行人、のむみちさん。古書往来座(南池袋)の店番をほっぽり出し(?)、鎌倉まで駆けつけてくれることに。奇しくも『にっぽんのお婆ぁちゃん』には、のむみちさんが愛してやまない飯田蝶子(風船ばあさん 花)が出演している。
 会期中は関連上映として、我が愛すべき超大作『華麗なる一族』(芸苑社、1974年1月)をはじめ、全9作品が上映される。5月22日(土)には、映画『バイプレイヤーズ』の松居大悟監督のトークイベントがあり、こちらも楽しみ。



『華麗なる一族』(芸苑社、1974年1月)予告篇

 大学1年のとき、由比ヶ浜にある古本屋(いまも盛業中)で短期バイトした話は、『脇役本 増補文庫版』(ちくま文庫、2018年4月)に書いた。あれから25年。鎌倉との縁を感じている。
 このご時世ですが、鎌倉にお越しのさい、お立ち寄りいただけると幸いです。